「あぁ、それなんだけどね」
ルーンは立ち上がると、少し斜めって張られてある地図の前へ立った。
細い棒で、ピシィッとセントマリナを差す。
「あんたらが今回行くところはここだ!」
「先生、そこ今オレたちがいるとこ〜!」
「今から差すんだよ!いいから黙って聞きなっ!ロミオ!」
ルーンは、セントマリナの北西、山あいにある小さな町を指し示した。
「さぁ、ここで問題だ!この山…」
その町の近くにある山を指す。
「この山は何てぇ名前の山だっけねぇ?ロミオくん」
「おっ、オレね!先頭きってオレ!」
ロミオは帽子をかぶり直して気合いをいれると、「う〜ん」と考えだした。
「…どんなに考えたってロミオがわかるわけないし〜」
小さな声でリアが言う。
「…う〜ん…。ほにゃららマウンテン……」
「じゃぁ次、リア!」
リアはしかめっ面でルーンを見た。
「えぇっ!?あたし〜?先生、あたしが分かるわけないじゃないですかぁ」
「聞いてやんなきゃかわいそうだと思ったんだよ!んじゃ、ジャスティン」
「お、おう…」
セントマリナ周辺の細かい地名を習うのは、中等科1年の頃だ。
だいぶ前に勉強したことは、たまに復習しないとどんどん忘れていくものである。
まぁ、自分がいる町なんだから、周辺の地名ぐらい覚えておくのが常識なのだが。
「何か、栗みてぇな名前なんだよなぁ」
「確かにそうね」
分かっているヴァレリーは大きくうなずいた。
「栗?マロン?マロン山〜?」
「キャハ!何それ〜!ださ〜い!おもしろ〜い!」
「おもしろ〜い!マロン山〜!」
笑い転げるリアとロミオの横で、ジャスティンはぽんっと手を打った。
「そうだぜ!モンブロン山だ!」
「おぉ〜、すごいねぇ、ジャスティン」
パチパチとルーンは拍手した。
「モンブロン山を含む、この一帯の名前は何だっけね?ヴァレリー」
「えっと、ヴァレッサ地帯です。この辺りは常に上空の気流が乱れていて、年中通して冷たい風が吹いてる地域なんですよね」
「そうそう!さすがだね〜、ヴァレリー。そこのバカ二人、見習うんだよ!ちゃんと復習しときな!」
