キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……

 生徒達はわらわらという教室から出ていった。

「エラサニダは……」

 プールの言葉に重ねるようにして、生徒達は投げやりな感じで言った。


「花粉を吹き出してくる!」


「お、ちゃんと聞いてたんだな、みんな。偉いぞ〜!」
 と、ニコニコして言う。

 しかし誰も喜ぶ者などなかった。

「じゃ、リアちゃん、今夜」
「うん!じゃあね、ニック」

 ニックは教室の出入口の辺りでリアを振り返ると、もう一度手を振った。

 リアも笑顔で手を振り返す。


 教室からは、あっという間に生徒達がいなくなった。

「まるで嵐の如くだ」

 うんうん、とうなずきながらプールはつぶやいた。

 しかしリアはまだ教室に残っていた。 

 いそいそとバッグの中から化粧ポーチを取り出す。

「先生っ!」

 手を上げる。

「おっ!どうしたリア!授業の質問か?」

 うれしそうにプールはリアを見たが。

「化粧直ししていい?」

 授業とは関係ない質問だった。

 プールはため息をつきながらどうぞどうぞと手を振る。


 リアは鼻歌を歌いながら、いそいそとポーチからビューラーを取り出した。

 ベビーピンクのストライプをしたポーチで、白いポンポンがファスナーについている。

 一緒に出したコンパクトミラーは、これでもかというぐらいラインストーンがついてキラキラしていた。

「何なんだその鏡は!眩しいなぁ」

 ちょうど窓から射し込んできた日の光が反射したらしい。

 プールは眉根を寄せた。
「ごっめーん、先生っ!でもね、そうやって魔物をめくらます効果もあるのよ〜」

 ビューラーで睫毛をカールさせながらリアは言った。

「おぉ、そうか!なるほどな。すごいな!」

 しきりに感心するプールだったが。

 リアは小さな声でつぶやいた。

「そんなことするわけないじゃ〜ん」
「ん?何だ?リア」
「べっつに〜!何でもな〜い」

 ヌーディーなベージュのグロスをぬりぬりと塗る。

 プールは「はぁ…」と感心しながらリアを見た。