とろとろミルフィーユチキンは、作るのがめんどくさいため、2ヶ月に一度あるかないかの、幻のメニューと言われていた。

 薄切りチキンを、間に野菜を挟んだりしながらミルフィーユ状に重ねていき、崩れないよう時間をかけてじっくり煮込んでいく。

 最後に、煮込み汁と共に特製のあんかけをたっぷりとかける、かなり人気の30個限定の一品だった。


 渋るロミオの向こうずねに蹴りを入れる、リアのその後ろ。

 一人の男子生徒がそろそろと近づいてきていた。

 ふっくらした体系にぷくぷくとした顔。
 天然パーマの金髪をした、ジャスティンたちと同じ高等科1年のダミアンだ。

 数多くいる、リアのファンクラブの会員の一人である。

 憧れのリアを前に(リアは背を向けてるが)、ドキドキしているダミアンをいち早く見つけたジャスティン。

 ニヤニヤ笑いながら言った。


「よぉ、ダミアン」

 その声に、他の三人…もちろんリアも…くるっとダミアンの方を見た。

「あら、ダミアン」
「!!」
 
 瞬間、リアの背後にぱぁぁっと白い百合の花が咲いたようにダミアンには見えた。


 あぁ…!リアさん!

 相変わらず…かわいい!!

 
 ますますダミアンの顔は赤くなった。

「どうしたんだよ、すっげぇ顔赤いぜ。熱でもあんじゃねぇの?おうちに帰ってママに看病でもしてもらえや」
「なっ…!何だとジャスティン!うるせぇ……」

 リアの前で思わず口の悪い言葉を言いそうになったダミアンは、慌てて口をつぐんだ。

 頭をぶるぶると振る。

「う、うるさい。お前に用はないんだ」
「血圧高そうだもんな〜、ダミアン」
「あぁ、こないだの健康診断でさぁ……ってちがう!ロミオ!」

 そんなダミアンを、リアは不思議そうに首をかしげて見ている。


 あぁ!リアさんに変な奴だと思われてしまう!