オレンジスター校では、高等科に入ると、授業は午前中だけで終わる。

 午後からは、仕事で受けることができなかった授業を受けたり(一応単位があるので)、料理や美容、美術、音楽や部活動、社会経験をするためにバイトをしたりと、各自が自由に過ごすことができた。


「あ〜あ、何しよっかなぁ」

 爪をいじりながらリアはつぶやいた。

 あまり長く伸ばされていない爪だが(そりゃぁ魔物なんかと戦うわけだから、そうそう伸ばしてもいられない)、ラインストーンがキラキラくっついていたりと、凝ったデザインが施されてあった。

「やっぱり行こうかな。『マーゴット』に」

 『マーゴット』とは、美容院にマニキュアの専門店が併設されている、割とリーズナブルなお店のこと。

 オレンジスター校の女子のほとんどが、そこに通っていた。

「でも、新しくしてもらう必要なくない?爪、きれいじゃない」
「そうだけどぉ〜、何かあきたってゆうか〜」
「はぁ、そう」

 ヴァレリーは自分の爪を見た。

 彼女の爪は、全く何も塗られていない。

 魔法を使う時の精神集中の妨げになると、魔導士の先生にきつく言われているから何もできないのだ。

「マジメっ子ヴァレリーはお勉強でしょ〜。ジャスティンとロミオは何やんの?」
「何やっかな。バスケでもすっか?ロミオ」
「それより食堂のおばちゃんとしゃべった方得だぞ?まだ秘密の来週のメニュー教えてくれるし」
「…どうでもいい……」

 リアはわざとらしい、大きなため息をついた。

「あ〜、くだらない!あんた、食い物から離れることできないわけ?」
「できん!(きっぱり)
 でも、来週はお前が待ちに待ってた、とろとろミルフィーユチキンがあるみたいだよ〜」
「!?マジで!?」
「おう」
「並んであたしの分もとっててちょうだい」
「え〜」
「学校のアイドルに頼まれてんのよ?それってすんごく名誉なんだから!」
「そ〜か?」