「ね、そういえば聞いて〜!自慢していい?」
「すんな」
「右に同じ」


 リアは男二人の向こうずねに蹴りを入れた。


 痛がる男二人を無視し、リアはヴァレリーに話しかけた。

「あのね、あのね!今夜ニックとお食事行くの〜」
「へぇ〜。どこに?」
「時計台の近くにできたレストラン!」
「あぁ!そういえばできたわよね、新しいお店」
「ね?いいでしょいいでしょ〜」
「まぁうらやましいけどさぁ」
「モテる女は辛いわよね〜?」

 と、そう言った後、リアはわざとらしく口を押さえた。

「や〜ん!ヴァレリーに同意求めちゃった〜!ごっめ〜ん!」
「……」

 ヴァレリーの額にピシッと亀裂が走る。

「ヴァレリーどうしたの〜?すっげぇ顔!」

 ヘラヘラ笑いながらロミオが言う。

 危険を察したジャスティンは、慌てて言った。

「だ、だけどよぉ!おめぇ、好きな人いるっつうのによく他の男ととっかえひっかえデートするよなぁ」
「だぁって〜、あたしとデートしたいっていう男の子が多すぎるんだもん!」

 言いながら足をぶらぶらさせる。

「あたし、ほらすごく優しいでしょ〜?」

「そうなんだ〜」

「……」

 痛がるロミオをよそ目にリアは続けた。 

「断ったらかわいそうじゃん?」
「……そうかねぇ……」

 男ったらしだ、って先輩が思うんじゃねぇかな…。

 と思ったが、とりあえずジャスティンはよけいなことは言わないことにした。

「そのレストランって高いのかしら?ま、あたしはお金出さないから別にいいんだけどさ」 

 すると、『マリナタウン』を見ていたヴァレリーが顔を上げた。

「ううん、ランチだと案外安いわよ。900円から…だって」
「マジで〜!?安いならそれなりだとは思うけど〜、ね、今度行ってみない?ヴァレリー」
「うん、そうね!行ってみましょ」

 女二人とも、水に流したかのようにさっきの険悪な感じは消えている。

 ペラペラしゃべりながら、『マリナタウン』を一緒に読み出した。