魔物学の教師、プールは黒板に描いた自分の絵の巧さに惚れ惚れしながら話を続けた。

「……というわけで、このエラサニダという魔物は、一見するとただの植物にしか見えないが、触れると途端に巨大に変身し、そして!」

 くるっと振り返ったプールは「あぁ……」とがっくり肩を落とした。

 教室中の生徒、誰もが自分の話なんか聞いちゃいない。

 みんな、ちらちらと時計の方ばかり気にしていた。

 つられて時計を見たプールは納得した。

 なるほど。
 あと少しで12時だ。

「ほらほら!もう少しで授業も終わるから先生の話を少しは聞けよ!」

「……………」

 ―――無反応。

 トホホ……。

 プールは声を張り上げた。

「エラサニダは巨大になったらどんな攻撃をしてくる!?」

「……………」

 生徒達は教科書やノートらをバタバタと片付けだした。

「エラサニダはどんな攻撃をしてくる!?」

 懲りずにプールが聞くが誰も答えようとしない。

「昼飯どうする?」
「食堂行くか?」
「学校の近くにおいしいお店ができたんだってよ」
「学割できるみたいよ!」
「マジで!?」
「行きましょ!」
「だな!」

 そんなひそひそ話がプールの耳に入ってくる。

「エラサニダはどんな攻撃をしてくる!?」

 声を大にして、懲りずにまた聞く。


 金髪の男子生徒が、隣に座る女子生徒に声をかけた。
 彼女は、さっきからつまんなさそうにあくびばかりしている。

「ね、リアちゃん。今夜食事にでも行かない?」
「あ、それいい!」

 目をキラキラさせて手を打った。

「新しいレストランが時計台の近くにできたみたいでさ、実は優待券もらったんだよ」
「いや〜ん!素敵!あたしでいいの?ニック」
「もちろん。リアちゃんとじゃなきゃ嫌だよ、おれは」
「きゃは!ありがと〜!ニック!」

 クネクネしながらリアは喜んだ。

「エラサニダはどんな攻撃をしてくる!?」

 まだまだ懲りずにプールが聞いてきたその時。