「言ったね、私」

赤と白と緑の電飾がにじんで見える。

「終わりにするつもりだったの。……あの時は」

声が震えた。
涙が一粒、冷たい頬を流れて落ちる。

「だけど、本当は終わらせたくなかったの」

ずっと、ひとりで胸に抱えていた気持ちを吐き出したら、堰をきったように涙が止まらなくなった。

「本当の恋人になりたかったのに、なれなかったの」

それまでずっと黙って隣を歩いていた加地くんが、急に私の前に立ちはだかった。
顔を上げると、悲しい目をした加地くんと目が合った。

「……俺は」

加地くんは一瞬なにかを言いかけて、口をつぐんだ。

「……ごめん」

「……なにが?」

加地くんは目を伏せる。

「俺たち、ずっと仲良しでいられるかな」

とても小さな声で加地くんは私にたずねた。

「いられるよ。これからも仲良しでいようよ」

今にも泣き出しそうな加地くんの顔が、まるで捨てたれた子犬みたいで私は少し笑った。
さっき、気持ちを吐き出したおかげで、ちょっとだけ気持ちが軽くなった気がする。

「元気出してよ」

私は泣き笑いをしながら、加地くんの肩を叩く。

「ずっと友だちでいてあげるから、ね?」

私が言うと、加地くんも少し笑った。

「さ、かえろ」

私たちは再び歩き出す。

ふいに加地くんがちいさな声で歌いだす。
その歌声を聴きながら、私は歩いた。
とてもきれいで、なんだか切ない歌だと思った。

「I had not understood your feeling.What should I have done not to hurt you?」

(僕は君の気持ちを全然わかってなかったね。君を傷つけないために、僕はなにをすればよかったんだろう?)