「ここの敷地に社員寮建てて、社宅代を無料で住まわせてあげたら、社宅手当も交通費も払わなくてもいいから、その分給料に回してあげられるでしょ。ブライダルハウスと提携するんだったら、
それなりの売り上げだって得ることが出来るんだし。頑張ればボーナスだって払ってあげられるんじゃないの?」
「でも、お義母さん、そのブライダルハウスと提携するにも資金が必要なんですよ」
「もちろん、それもわかってるわよ」
「ねぇ、仕事の話だったら僕関係ないよね?テレビ見に行っていい?」
哲平が立ち上がって、悦子を見下ろした。
「座りなさい、哲平。ここから、あなたにも関係ある話だから」
「へ?なんで?」
「いいから座りなさい」
「は〜い」
渋々哲平は椅子に座り直す。哲平が座るのを見ると、悦子はテーブルの上の貯金通帳を手に取り、ページを開いて他の3人に見えるように向けて、テーブルの上に戻した。
「これは、哲平が生まれた時に、私が万が一に備えて愛に掛けていた生命保険」
悦子にそう言われて3人は貯金通帳を覗き込んだ。



