「長岡くんの事は聞かないんですか?」
「あ、長岡の事は美雪ちゃんに任せるよ」
「え?私に?」
「邪魔だったら、叱っといて」
「え?私が?」
「ああ。宜しく。俺、ちょっとコーヒー飲んでこよっと」
軽く右手を上げると剣二は喫茶コーナーへ消えて行った。その後ろ姿を呆然と見送る美雪。
「…私が叱るの〜?」
そこに、剣二と入れ違いにバタバタと走りながら美咲が血相を変えてやって来るのが目に入った。
「は〜…。私はあの子を叱るのだけで手一杯です」
「片岡さ〜んっ!」
「走らないっ!」
「スミマセンっ!」
「で、どうしたのっ?」
「あれ?社長は?…てか、あの子、またなんかやらかしたな」
撮影を終えて剣二の姿を探した光俊が見たのは、美雪は美咲がやらかしたミスのフォローをする為に、速足で事務所に向かって大股で歩き出し、その後ろをチョコチョコと小走りで美咲がついて行っている姿だった。
「え?ああ、ほんとだ。平野さん、後で慰めてやった方がいいですよ」
航が笑いながら二人の方を見ながら言った。
「は?なんで俺が慰めんだよ?」
「だって、あの子、平野さんの事好きなんじゃないですか?俺には全然不愛想だけど、平野さんにだけ真っ赤になって挨拶しますもんね」
「あれ?お前も知ってた?あの子が俺を好きだって」
「ええーっ。自覚症状ありですか?」
「まぁな」
「平野さんって、あのくらい若い子もアリですか?」
「かわいいとは思うけどなぁ」
「付き合う対象じゃない?」