「なんか、人使い荒いっすね〜」
「そう?ま、座ってよ」
二人はデスクからテーブル席へと場所を移し、向かい合って座った。
「今どきの若い子って、1から10まではっきり言わないとわかんないのよ。察するって、ことがないのよね。そこを踏まえとかないと、こっちがイライラするだけだから」
「ま、確かに。例えば、この場合だと、大好きな僕の分しかコーヒー淹れてこないとか?」
そう笑いながら言う、光俊に、
「違うわよ。発注した私の分しか淹れてこないのよ」
と、真顔で答える美雪。
「いやいやいや、それはないでしょ。例え好きじゃないとしても、この場合、お客ですから僕」
と、その時ドアが開き、トレーにコーヒーカップを1つだけ乗せた美咲は入って来た。
「…」
「…」
美雪と光俊が無言でそのコーヒーカップの行方を見守る中、美咲は向かい合う二人の間にカップを置き、スススッと美雪の方に寄せた。
「どうぞ」
「…」
自分の方に来なかったコーヒーカップを見つめ続ける光俊。
「ほらね。…美咲ちゃん、あと2つ。お客様のと、美咲ちゃんのも淹れて来て。一緒にアルバム見ましょ」
「あ、はいっ。すぐ淹れて来ますっ」
美咲は再び慌てて出て行った。
「どう?ああいうのに好かれちゃってる気分は?」
「いや、可愛いじゃないっすか」
「まぁね、確かに可愛い。人間は素直だし、いい子なのよね。仕事教えるのが大変なだけで」
「それは部下としては致命的ですね」
「でも、嫁としてはいいかもよ。どう?」



