好きって言っちゃえ


そんなことを言われているとはつゆ知らず、その頃光俊はブライダルハウスに出来たばかりのアルバムを届けにやってきていた。

「お疲れ様っす」

受付の人と挨拶をして奥へと進む。平日とあって、結婚式が行われていなのでお客もなく閑散としている。奥のスタッフルームまで来ると、ノックして中に入った。

「失礼します」

中に入ると、黒いパンツスーツを着た女性が2人デスクに向かい合って打ち合わせをしていたが、光俊の声に手を止めた。

「あれ?平野くん?今日なんかあったっけ?」

と、言ったのは舞と中学の同級生でいまだに仲の良い片岡美雪(カタオカ ミユキ)。美雪はここのブライダルハウスの別の所で働いていたが、ここが出来た時に転勤してきたいわゆるベテランブライダルコーディネーターで、もう一人の松崎美咲(マツザキ ミサキ)はここで雇われた新卒の新人コーディネーターで二十歳。

「なんかあったっけ?って。そんなつれない言い方しないでくださいよ〜。ねぇ」

と、急に同意を求めて来た光俊に、ビクッとしつつ、

「はいっ」

と満面の笑みで元気に答える美咲。

「何その顔?さっきまで落ち込んでたくせに。あっ?もしかして美咲ちゃん、このチャラ男が好きなの?」

「っ!!」

舞と同じく33歳、独身の美雪は二十歳の子の乙女心など全く無視である。

「いやいやいや、片岡さん。本人目の前にチャラ男って…。勘弁してくださいよ、こう見えて、ちゃんと仕事出来る男なんっスから」

光俊も最早若くはない32歳。固まっている美咲を確認しながらも、自分で自分を軽くフォローしつつ平然と話を続ける。

「アルバム第1号持って来ましたよ」

「あっ、出来たんだ。見せて、見せて。私にとってもここでの第1号だから、速く見たかったのよね。もちろん、うちの見本用のもあるんでしょ?」

「もちろんっスよ」

「美咲ちゃん、突っ立ってないでコーヒー淹れて来て」

「あ、はいっ!」

慌てて出て行く美咲の後ろ姿が閉まるドアで見えなくなる前に

「3人分ねっ!」

と、美雪が付け足したが美雪に聞こえたかどうかは謎である。