好きって言っちゃえ


「…ショックなんすか?」

ぼーっと天井を見上げた、舞を見て光俊が真顔で声を掛けた。

「別に…」

「いやいや、別にって顔じゃないっすよ」

そう言われて、舞は光俊の顔を見た。

「じゃ、どんな顔よ」

「言っちゃっていいんすか?」

「なに?」

「振られた女の顔してますよ」

「はぁ〜?なんであたしが悠ちゃんに振られるのよ、んな分けないでしょっ!…ちょっと驚いただけよっ」

自分でもびっくりするくらい大きい声で否定してしまって、恥ずかしさのあまり冷静さを装いながら声のトーンを抑える舞。

「ま、それならそれでもいいっすけど」

光俊は立ち上がって、浄水器のついている蛇口からコップに水を汲んでゴクゴク飲んだ。その様子を見て、舞は光俊が水も飲まずに山盛りのパスタを食べ終えたのに気づいた。

「あ、ごめん。水出してなかったね」

「何を仰いますか。水くらい自分で汲みますよ」

そう言いながら光俊は空になったコップにもう一度水を汲んでから椅子に座り直し、背筋を正して、舞に頭を下げた。

「ありがとうございました。美味かったっす」

光俊の態度に思わず舞も姿勢を正した。

「…どういたしまして」

「でも、なんで作ってくれたんすか?」

「なんでって…。この台所見たら、まともな物食べてる形跡がなかったからよ。ここで飢え死にされたら気持ち悪いじゃない」

「気持ち悪いって…。俺はてっきり、桃子さんに対抗心燃やしたのかと思いましたよ」

「はぁ?なんで私が桃子さんに対抗心燃やすのよ?意味わかんない」

と言いつつ、桃子の持っていた買い物袋を見て、パスタを作る気になったのは確かではあった。

「じゃ、せめて、飢え死にされたら気持ち悪いじゃなくて、俺の体を心配してって言ってくれても良くないっすか」