好きって言っちゃえ


舞は家に戻ると、居間に悦子が常時置いている飴玉をガシッと一掴みして、玄関に戻ろうとして、ふと立ち止まる。

「…」

2、3秒固まった後、舞は台所に向かい、冷蔵庫の中を覗き込んだ。

「あ、ある…」

舞は中の一点を見つめるとしばし考え込んだが、その食材を手に取りついでにバターも手に取ってから冷蔵庫を閉め、乾物を置いている棚からもサッと何かを掴むと、バタバタと家を出た。

コンコンコン。

舞は光俊の部屋の前に戻ると、軽くノックして、ゆっくりドアノブを引いてみるとスッとドアが開いた。

「あ、開いた」

自分で鍵を開けておくように言った割にはホントに開いていたことに驚きつつ、舞は光俊の部屋に上がり込んだ。

「お邪魔します」

台所に持ってきた食材を置くと、飴玉だけを持って、奥の部屋で寝ている光俊の所へ歩み寄った。これと言って何も置いていない部屋の真ん中に布団を引いて光俊は、掛け布団を頭から被って寝ている。舞は光俊の横にしゃがみこむと、小さい声で声を掛けた。

「飴もってきたから、嫌でも舐めたら楽になると思うから。ここ置いとくね」

そう言うと、舞は飴玉を置くと、立ち上がって、

「台所借りるよ」

と、直ぐに台所へと戻って行った。

「…」

光俊はゆっくりと掛け布団を下げて顔を出し、舞が置いて行った飴玉を手に取り、一粒口にすると、再びそのまま目を閉じた。舞は、台所に立つと、収納扉を適当に開けて、鍋やフライパンを取り出し、調理をし始めた。光俊が布団の中で3つ目の飴を舐め終えたころには、部屋にはいい匂いが漂い始めていた。