好きって言っちゃえ


102号室の玄関に滑り込み、ホッと胸をなでおろす舞。落ち着いて顔を上げると、目の前に上下鼠色のスウェットを着た、血色の悪い光俊がぼ〜っと立っていた。

「うわっ!」

「…うわぁじゃないでしょ」

光俊は力なく呟くと、壁に背を持たれた。

「なんか用っすか?」

「あ、ごめん。…母さんが様子見て来いっていうから…。っていうか、やっぱり病院行った方がいいんじゃない?ホントに顔色悪いよ」

「大丈夫ですから」

そう言うと、光俊はよろよろと壁に手をつきながら部屋の奥へと入って行こうとする。

「あ、ちょっとぉ。病院行かないんだったら、せめてなんか食べてから寝た方がいいんじゃない?体力落ちて…」

と、言いつつ舞は玄関入ってすぐの台所をサラッと見渡しやたら片付いている流し回りを見て、ピンと来るものがあり、

「ちょっとお邪魔するわよ」

と、上がり込み、勝手に冷蔵庫を開けた。

「やっぱり…」

冷蔵庫の中に入っていたのは使いかけのマヨネーズと小さな小瓶の塩だけだった。舞はすでに寝室の布団に横たわっている光俊の方にずかずか歩み寄り頭上から声を掛けた。

「ねぇ、ちゃんと食べてる?」

「…まぁ」

小さな声が聞こええる。

「カップラーメンが2つあったけど、まさか、カップラーメン食べてるだけじゃないでしょうね」

「…」

数秒待っても、光俊の返事はない。

「…呆れた。日射病で眩暈がしたんじゃなくって、それって、たぶん低血糖よ。そのまま寝てていいけど、すぐ戻ってくるから、玄関の鍵、開けといてね」

「…」

光俊の返事がないまま、舞は一旦光俊の部屋を出た。そして101号室の前を通る時、ふと足を止めて、のぞき穴から部屋の中を覗こうとして、思い直した。

「見えるわけないか…」