秀人は少し運転席に体を寄せ、小声で航に呟いた。
「平野さん、病院行かなくて大丈夫なんですかね?」
「ああ、そう思うんだけど、本人行きたくないみたいだから、とりあえず戻ろう」
「そうですね」
秀人は運転席と助手席のシートの間からチラリと光俊を見ながら助手席に体を戻した。それから、あまり会話もないまま、車は京極写真館へと戻って来た。
荷物を下し、3人は2階のスタジオの奥の作業室へと入って来た。
「戻りました」
最初に航が入ってきて、中にいた剣二と悠一と舞はドアの方に顔を向けた。
「お疲れ様〜」
「戻りましたっ!」
続いて大きな声で秀人が入って来る。
「お疲れ」
その後、続いて現れるはずの、光俊がなかなか入って来ない。
「平野は?」
思わず剣二が航に尋ねた。
「ああ、なんか、今日調子悪いみたいで。お店で会長に呼び止められて、水勧められてましたから、飲んでから上がって来ると思います」
「そっか」
「今日の撮影ガーデンウェディングだったんだよな?」
と、悠一。
「はい。天気良すぎて。日射病かもと思ったんですが、医者に行かなくていいって言うんでとりあえずそのまま戻ってきたんですけど」
と、そこに、
「ちょっといいかしら」
と顔をのぞかせたのは店番をしているはずの悦子だった。
「あ、会長。平野は?」
悠一が椅子をクルッと回して悦子の方を向いた。
「その平野くんなんだけど、本人はここに戻るって言い張ってたんだけど、私の判断でアパートに帰らしちゃった。良かったかしらね」
悦子は剣二と悠一の顔を交互に見ながら控えめに聞いてきた。
「良かったかしらねって…。もう、帰らした後なら、いいも悪いもないじゃない」
パソコンに向いたまま、ぼそっと舞が呟いた。
「ああ、でもホント、体調悪そうでしたから、その方が良かったんじゃないですか?」
航が恐る恐る意見した。
「今日は、他に撮影はないから、問題ないですよね?」
悠一も壁に貼ってあるスケジュール表を確認して、剣二に確認を取った。
「そうだな。皆も体調悪くなったら、無理せずにチャンとケアしろよ。こじらせて長く休まれる方が、困るからな」
と、剣二。
「はい」
従業員一同、声を揃えて返事をしたのを見届けて、悦子はお店に戻って行った。



