哲平がテーブル下で足を摩る中、悦子は話を続けた。
「私たちだけでこの写真館やってるのならいいけど、今は他人にも働いてもらってるのよ」
「他人って、悠ちゃんのこと?」
「そうよ。もちろん、悠ちゃんは子供の時から知ってるし、お父さんが亡くなった後、本当に良く働いてくれて、『他人』なんて言ったら、申し訳ないくらいだけど。それでも、やっぱり悠ちゃんは他人なのよ。大手でお給料もいい所に就職決まっていたのに蹴って、ここにきてくれて、文句も言わずに、もう10年も頑張ってくれてる」
「はい。ありがたいと思っています」
と、剣二はしみじみと頷いた。
「だから、そんな悠ちゃんに、ボーナスの一つも出してあげたいじゃないの」
「そうですね」
「悠ちゃんだって、舞の1個うえだから、もう34でしょ?」
「もうって・・・」
舞は不貞腐れたように脱力して、ため息をついた。



