好きって言っちゃえ


1人3分といえど、20人全員と話すとなるとそれだけで1時間かかる計算となる。半数の10人と話し終わったころには結構な疲労感に襲われる。だが『結婚したいあなた』たちは、そこは気力で乗り切り、自己PRと質問を繰り返すのであった。

「はいっ!交代です!」

舞が七三分けで真っ青なスーツの男性と向き合ったころ、航はピンクのワンピースの女性と向かい合っていた。

「宜しくお願いします」

「こちらこそ。あ、桃子さんだから、ピンクなんですか?」

「あ、いえっ、そういうわけじゃないんですけど…。いい年して、ピンクが好きなんです。可笑しいですよね」

恥ずかしそうに少し俯く女性は、京極写真館でお見合い写真を撮った鈴木桃子だった。

「いや、可笑しくないですよ。それに、いい年って言っても、この中じゃ絶対若い方ですよね?」

「先日30になりました…」

「おっ、じゃあ僕たち、同い年ですよ」

「あ、そうなんですね」

パッと顔を上げてはにかむ様に微笑む桃子に、

「…かわいい」

と、心の声が口から洩れてしまう航であった。そして、その口の動きをたまたま近くに立っていた美雪が目撃し、手に持っていた資料で桃子の事をチェックしてしまうのであった。