「なんなんや、あのガキんちょ!!!!」

一方的に通話を切られ、無機質な機会音が流れる携帯を片手にブチギレる秀樹。

「学校サボりやがって……」

本当に腹が立つ。

収入のない学生の身で、誰のおかげで学校に通えて路頭に迷うことのない立派な暮らしができてると思っているのか紗和に対して疑問を感じていた。

由美子さんが頑張って働かなきゃ路頭に迷うガキが本当に……。

深いため息を吐く。

「——山本」

不意に、凛とした声が耳に入ってきた。

姿を見なくてもこの声の主が誰だかわかる。そんな自分を変態臭いな、と心のなかで嘲笑う。

「由美子さん。苗字で呼ばんといてくださいって何度も——」

「そんなことはどうでもいい」

「え、さすがにそら傷つきます」

この人のこれはツッコミなのか本気なのかわからないそれに、少し凹む。

本当この人は——。

「傷ついてるとこ悪いが、例の話は紗和に伝えたか?」

「はっ!」

「まさか、忘れてたとは言わないだろうな」

そのまさかだ。すっかり忘れていたのだ。

それもこれも、用件を伝える為に電話をかけたにも関わらず紗和が——彼女の妹が爆弾発言を落としたからだ。

それに対し秀樹も用件よりそれに気を取られ、用件を言う前に彼女によって通話を遮断され言えず仕舞い。

「それが……その……」

素直におたくのお嬢さんが、学校をサボる発言をしたから忘れました、だなんて彼には言う度胸もなく——。

「すみません、社長」

折れるしかなかった。

「どうせ紗和とまた喧嘩でもしたんだろ。あれとお前は本当に、馬が死ぬほど合わないな」

「……」

それはごもっともで、ついさっき口喧嘩っぽくなったばかりだ。