「そりゃよかった。ほんで、学校サボってなにやってんねん?」
さすがに誤魔化せなかった。
「……ごめんなさい」
渋々と謝る。電話の相手——秀樹さんこと、山本秀樹は一度怒らせると面倒なタイプだ。
「あんなぁ、紗和ちゃん。ごめんで済むなら警察はいらんって言葉知っとる?謝るなら最初からするなっちゅーねん。わぁーたか?」
「……はい」
「はい、が遅いねん!!それに覇気がない!!」
「はい!」
一度怒らせると熱血教師か、時代遅れの頑固じじいかってくらい説教垂れるところがある。一番怒らせたくない相手だ。
少し間が空き、相手のため息が少し電話越しに聞こえてる。
隆司さんがため息するときは、何を言うか決まってる。
「ゆうておくけど、紗和ちゃんの学費全部誰が誰が払うとるか知っとるか?」
「……知ってる」
「それならなんで——由美子さん、ほんま悲しむぞ」
「……」
そうこの人は、どんなに私を心配してるふうな言葉を吐いても所詮。心配してる”ふう”なんだ。
本気で心配はしてない。
彼の中で一番大切なのは、由美子——私の姉のことだけなんだ。
だから彼の言葉のなかに親切心なんてものは、微々もない。
姉が全てであり、その姉に影を落とす原因たる私が気に食わないんだ。
そんな姉にばかり気を遣って、株をあげるためだか知らないが心配してるふうで、小言を垂らす彼が心底嫌い。

