フレンチトーストを作り終え、お皿に盛りつけようとしていたところ――部屋から携帯の着信音が聞こえてくる。
「またかよ……」
先程、電話を掛けてきた男からだと思い無視し続ける。
お皿に盛り終え後片付けをして、いざ食べようとする合間も着信音は鳴りやまない。
さすがの彼女もこれには参ったのか、一言文句をいってやらんばかりの勢いで部屋へと向かい鳴り続ける携帯を手に取る。
誰からの電話なのかも確認せず、電話に出た彼女は一手をさす。
「しつこいな……!!今から学校に来いなんて言われても、行く気ないから」
この時、彼女は自分の置かした過ちに気づいてなかった。
気づいた頃にはもう手遅れ。
「へぇ……紗和ちゃん。学校サボったんやな」
電話の向こうから聞こえてきた声は先程の男より違うもので、癖のある関西弁だった。
聞き覚えのあるその関西弁に、紗和は一気に青ざめる。
「え……、あ、、」
「ん?どうしたん?その反応からやと、まさか俺からだと思いもしなかったんやろ。紗和ちゃん」
優しい声音なのに、それに抑揚はなく淡々としていてまるで少し怒りを含んでるようにも思えた。
「お、お久し振りです。秀樹さん」
「おう、久し振りやんな。元気にしとん?」
「は、はい…お陰さまで」
とつづいて、渇いた笑みが溢れる。
まさかの思いもよらない人からの電話だというのと、一番知られてはいけない人に自ら爆弾を落としてしまったものだから内心、肝が冷える思いだ。

