「紗和。ちょっと来なさい」
帰ってきた姉——由美子に呼ばれ、部屋にいた紗和はリビングの席で向かい合わせになった。
二人の間に、気まずい空気が流れる。
「山本から聞いたが、学校サボったんだな」
「……」
「頼むから欠席数これ以上増やして、進学できないとか留年に繋がることは勘弁して……」
溜息を吐きながら、そういう由美子の言葉はごもっともだが、それを彼女から言われたことが気に食わない。
それが紗和の我儘だというのは、本人が一番分かっていた。
義務教育を終えて、稼げる歳になったとしても所詮はまだ大人の保護下にいなきゃいけない立場。
堂々と気に食わない姉に刃向かうこともできない自分が歯痒い。
「私の妹がこんなことでつまづいて、それが私の弱みになるなんて……私は、絶対嫌よ」

