「ねぇ、楓。あんた、美優のこと、どう思ってるの!?」

放課後、楓を呼び出して、私は、問い詰めた。

「‥‥どうって、可愛いとは思うよ?」

楓はそう言った。

『相馬楓【そうまかえで】』。

美優の『好きな人』。

私は、楓に詰め寄って、質問した。

「それって、美優のことが『好き』ってこと!?」

私は、真剣に問う。

『茜ちゃん、お願い!!楓くんに『聞いてきて』!!』

そう言って、美優に頼まれたら、断れないじゃない。

ここは一肌脱がなくっちゃね!!

楓は、私のあまりの真剣さにたじろいでいたが、

「‥‥ごめん。オレ、美優ちゃんのこと、可愛いとは思うけど、それよりも『大切な子』がいるんだ。」

そう答えた。

ん!?

何ですと!?

楓には、別に『好きな人』がいる!?

だっ、誰!?

私は、楓の胸ぐらをつかんで、強引に引き寄せた。

「ちょっと、楓!!あんたの『好きな人』って誰よ!?」

私は、さらに問い詰めた。

すると、楓は私に顔を近づけると、軽く触れるだけのキスをいきなりしてきた。

私は、一瞬のことだったので、ワケが分からず、立ち尽くしていた。

しかし、すぐに状況を察し、怒りのあまり、楓に対して、拳が出ていた。

「あんた、いきなり、何するのよ!!人をからかってるの!?」

楓は、いとも簡単に、私のその拳を避けると、さらりと言ってのけた。

「オレの『大切な子』は、茜ちゃんだよ!!」

え!?

今、何て言ったの!?

ドキンッ!!

一瞬、胸の鼓動が高なるのを感じた。

「っ!!あんた、人をからかうのもいい加減にしなさいよ!!」

私は、真っ赤になりながら、憤慨していた。

でも、楓は真剣な顔で言った。

「オレ、本気だよ!?」

そんな‥‥‥。

本気なんて、私、どうしたらいいの!?

だって、楓は、美優の『好きな人』で‥‥‥。

「ゴメン!!私、楓の気持ちには答えられない!!」

そう言うと、私は逃げるように走り去ってしまっていた。

私は、途中で立ち止まった。

どうしよう!?

楓を一途に想ってる、美優に何て言ったらいいの!?

私は、その事ばかり、グルグルと思いめぐらしていた。