ここは…本当に私の通っていた高校なの?
それと…裁判…処刑って…

というかここは体育館のはず…一体何がどうなっているのだろう
想像もしていなかった展開に戸惑った私は、隣の由仁に話しかけた

「ねぇ、ここって体育館だよね?裁判とか…処刑って何…?」

「何言ってるの、そのままの意味だよ」

「そのままって言われても…………」



「そこ、静粛に。私語は慎みなさい」
壇上の女性は木槌を打って注意をした
というかあの女性…校長先生?
ベールを被っているがあのパーマは校長先生しかいないだろう

「だめだよ、裁判長…女王に逆らっちゃ」
由仁は声を潜めてそう言った

「わ、わかった」
女王…?でもあれは確かに校長先生のはず…
彼女はこの場で、絶対の権限を持っているようだ。裁判長…なのかな?

「それではクロネコ検事、冒頭弁論をお願いします」
女王が促すと、左手側に帽子を被った奇妙な格好の男性が出てきた
彼がクロネコ検事なのだろうか。だが…あれは…

「黒井…生徒会長…?」
私はよく確認した。だがあの鋭い眼は生徒会長以外にいないだろう
ここは現実と非現実が混じっているのだろうか

「はい、女王様。それでは…オホン、
 
つい先ほど2年3組に所属するチサ・アシュリーは、この学校の西校舎2階、視聴覚室で死体で発見されました
死亡原因は包丁で首を一刺し、死体が見つかったのは、えー、つい先程。第一発見者は被告人エミリー・ヘルキャット
事件の概要は以上です」

「なるほど」

「よって第一発見者のエミリー・ヘルキャットがチサ・アシュリーを殺した、と我々は迅速に判断しました」

「よろしい、第一発見者が被害者を殺したと十分判断できます」

「まったくもってその通り」

「それでは被告人エミリー・ヘルキャットに首切りの処刑を言い渡しま__

「ええ!?ちょっと待って!」
思わず私は大きな声を上げて席を立ちあがってしまった

「…何か?」
女王様が静かに尋ねる

「え、えーと、あの、おかしくないですか…?」

「何がです?」

「ここは裁判所なんですよね?」

「ええ、そうですよ」

「なら、今のはメチャクチャじゃないですか?
 私…裁判には詳しくないですけど…昌己とか、被告人の意見とか、弁護人も…
 こんなあやふやな情報で処刑だなんて…!」

「おや、君はこの裁判の規則を知らないようだね」
クロネコ検事が言った

「規則…?」

「まずは処刑、判決はそのあとです」
女王様が付け足した

「馬鹿げているわ!処刑を先にするなんて!」
処刑を先にする裁判なんて聞いたことない!

「そうよ、私はチサを殺してなんかいないわ!」
裁判所に凛とした声が響いた