私は教室から廊下に出た
誰もいない…とても静かだ
いつもなら聞こえてくる部活動生の声も聞こえない
それもそうか…学校で死体が見つかったら部活どころではない
夕方だし、もうほとんどの生徒は帰宅してしまったのだろうか

ぼんやりとそんなことを思っていると…

「フィーナ・クロフォードくん」

後ろから声がかかった
だが人違いだ。私の名前は城崎陽菜(しろさきひな)
とりあえず無視すると、トントンと肩を叩かれた

振り返ると、何故かガスマスクをかぶった、担任の石本先生が立っていた
「あ、石本先生。私、陽菜ですよ。そんな外国人みたいな名前じゃないです」

「………?何を言っているんだ?君はフィーナだろう?それと、私は石本先生ではなく、イモムシ先生だよ」

「え?でも、私…」

「生徒手帳を見てみなさい」

ポケットに入っている生徒手帳を見ると、そこには確かにフィーナ・クロフォードと書かれていた
よく見ると先生の名札もイモムシ先生になっている

どういうことだ?

「……まぁいい。フィーナくん、まだこんなところにいたのか。ほかの生徒はもう移動しているよ。君も早く行きなさい」
やけに静かだと思ったら、生徒たちはどこかに集められていたのか…
しかし、どこへ行けばいいのだろう。全く思い出せない

「………」
私は答えに詰まってしまっていた
何が何だかさっぱりだ

「ん、どうしたんだ?」

「……えーと、すみません、どこへ集合するんでしたっけ…」

「まったく、ぼんやりしていてはダメだよ、体育館だ」

「体育館ですか?」

「おや、まさか体育館の場所が分からないなんて事はないだろう?」

「わ、わかります、さすがに」

「では速やかに移動するように。こんな事が起きてしまって、私も忙しいんだ
 全く厄介事は困るよ…」
イモムシ先生は少し目を逸らしてそう言った

「………」

「いや悪い、独り言だ、私は先に行くよ。それでは」

「はぁ…ええ、それでは」
そうブツブツとつぶやいたイモムシ先生は体育館の方へと歩いて行ってしまった
イモムシ先生の言っていた「こんな事」「厄介事」とは先程の千沙の件だろうか…
なんだか状況に頭が追いつかないが、とりあえず私が向かう場所は体育館のようだ