最近、隣は物音一つしない。

大丈夫なのだろうか?体調は良くなったのだろうか?
部屋で倒れていたりしていないだろうか?

美寿々ちゃんに聞いた話だと「暫く留守にするって言ってました。でも顔色悪くて聞いたら『大丈夫』って言ってたけど心配してるんですよ』っと言っていた。

暫く留守にするって仕事は行っているのだろうか?会社が近いからこのマンションにしたと言っていたのに…


あれ?扉が開いてる。

彼女の部屋の扉が開いてる。

帰って来ているのか?

「美貴野……」玄関から声を掛ける。

出て来たのは両手に荷物を持った女性だが彼女では無かった。
たしか彼女の同僚の……

彼女は怪しい物を見る目で「あなた誰?」と聞く。

あぁ彼女とはミチルの姿の時しか会っていなかったか…

「隣の杉下だが、美貴野は?」

「えっーあのオカマ??ウッソー」

こいつでかい声でオカマって失礼なやつだな?!

「あぁそのオカマだよ!」

「へぇー歳はいってるけど結構イケメンじゃん!これなら美貴野の気持ちも分からないでもないわ!」

「美貴野の気持ちってなんだ?」

「え?気になるの?」

なんだこの女?

「そんな言い方されたら気になるだろ?」

「ねぇ聞いても良い?」

「な、何をだよ?」

何を聞かれるのかと思わず身構えてしまう。

「あんたさ、男が好きなのになんで美貴野と寝たの?」

「はっ?!!!……」

な、なんで美貴野と寝た事知って…あぁ美貴野が話したのか……でもなんで俺が男を好きだと言うことになるんだ?
俺はあの時だって美貴野に…

「ねぇなんで?」

「俺は化け物みたいな格好していても男が好きな訳じゃない!!」

「えっ?そうなの?だって若い男の人が訪ねて来て『帰って来てくれ』って言われたんでしょ?それにその人美貴野に『あの人が僕の元から消えてからずっと探していたんです。…あの人が居ないと僕はダメなんです。僕一人じゃ……出来たらあなたから戻る様に言ってもらえませんか?お願いします』ってお願いされたらしいよ!」

「ハァ……それは弟だ……」

どうして崇仁は美貴野にそんな言い方したんだよ紛らわしい。

「弟??」

彼女は目を丸く見開いて驚く。

「あぁ弟だ!」

彼女は「紛らわしいわ!!」と怒ると「じゃーあんた美貴野の事どう思ってるのよ?遊びで抱いたの?」

決して美貴野の事を遊びで抱いたりしていない。
初めは自分の気持ちが分からなかった。ただ気になるという程度だった。
だが、今ははっきり言える。美貴野が好きだと。
美貴野が欲しいと……

「遊びで抱くような歳じゃない。好きだから抱いたに決まってるだろ!!」

「じゃー美貴野を幸せにしてあげてよ!!」

彼女は美貴野の居場所を教えてくれた。

美貴野待ってろ!今、迎えに行くから!