いつの間にかリビングのドアが開いていてそこには久野先生が立っていた。

「うちに来なさい。橘さんだって同じ34歳でしょ?あなたも今の彼逃したら後が無いかもしれないわよ?」と久野先生は笑う。

「先生、私こう見えてもモテるんですよ!」

「あらっそうなの?」

宏海と久野先生は顔を見合わせて笑っている。

「でも、橘さんだって時間不規則でしょう?ここなら編集社までそんなに遠くないしタクシーで通える距離でしょ?私も家で仕事してるから何かあっても大丈夫だし、料理だって料理本出すほど料理は得意だから心配ないと思うわよ」

「有難うございます。お気持ちは嬉しいですが…」

「良いじゃん!先生が仰ってくれてるんだから」と宏海は言うが編集者がこんな事で先生に迷惑かけるなんてあり得ない。

「編集者の私がこんな事で先生にご迷惑をお掛けするなんてあり得ません」

「美貴野、私は編集者の鈴木さんに言ってるんじゃないの飲み友達の美貴野に言ってるのよ?」

「先生…」

「私もずっと独りだったし…暫く私の娘になってお酒の相手しなさい」

先生の気持ちが嬉しかった。
こんなにも私の事を思ってくれる人が側にいてくれて本当に有り難い。

宏海ありがとう。久野先生有難うございます。

「私、妊婦なんでお酒は飲めないですけどお茶でなら相手してあげます!」



その後原稿を受け取り社へもどった。

妊娠の事は仕事を続けて行くなら隠しとうせない為、部長と石田さん、それからうちの部の子達には話した。

久野先生の所には今度の休みに着替えなど身の回りの物だけを持って行く事になった。