ツケマお化けに恋して

その夜宏海は家に泊まった。

翌朝、いつも起きる時間より30分も早く宏海に起こされた。

「ちょっと冷蔵庫何もないよ!いい加減食生活考えなよ!」

「はい…」

宏海は普段口も悪く性格も男性的で男女問わず肩を組んだりしている。

だが本当は優しく家庭的な女性なのだ。

うちに泊まる時はいつも宏海が材料をもって来てくれて朝食を作ってくれる。

「仕方ないコーヒーだけにするか」と言ってインスタントコーヒーを作ってくれる。

宏海が入れてくれたコーヒーを飲もうとマグカップを口に持っていくと…

「うっ…」手で口を抑えトイレに駆け込む。

寝起きで空腹だった為、コーヒーの臭いで気持ちが悪くなってしまった。

「美貴野、あんた妊娠してるの?」

トイレから戻ると机に置いてあったコーヒーの入ったマグカップは2つとも片付けられていた。

「うん…11週に入ったとこ…」

「相手は?木村じゃないよね?」

「違う!」

「相談って妊娠の事だったんだぁ?………今は時間が無いから後で聞く。美貴野も一緒に久野先生のお宅へ行こう!」

昨日頂いた久野先生の原稿で手直しをお願いしたい事があって、朝一で宏海は久野先生のお宅へ行く事になっていたのである。

久野先生には今年に入ってからお会いしてなかったから私は仁美ちゃんに連絡を入れ宏海と一緒に久野先生のお宅へ向かった。



「久野先生、昨年はお世話になって居りながら新年のご挨拶にも伺わず申し訳ありませんでした。今回は原稿の手直しをお願い出来ますでしょうか?」

「どうせ手直ししないと美貴野は納得しないんでしょ?」

久野先生は去年の写真の事があってから私の事を美貴野と呼んでくれる。

「すいません」

「分かった、1時間で直す。待ってて」と書斎へと入って行った。