皆んなを見送った後私もタクシーでマンションまで帰って来た。

マンションの前には黒塗りの車が停まっていた。

「運転手付きじゃん…どっかのお偉いさんの車かな?」

エレベーターで5階まで上がって来ると辰次郎さんの部屋の前に人が立っていた。

あっあの人こないだの人だ…

私は会釈をして自分の部屋の鍵を開けて部屋に入ろうとしたら、その人に声をかけられた。

「あの…ここの人何処へ行ってるか知りませんか?」

「えーと…この時間なら仕事じゃないですか?」

「ですよね?…仕事ですよね……」

「……」

「もぅ…10年になります……あの人が僕の元から消えてから……」

彼は俯き呟くように言った。

えっ?