翌朝、出勤準備をし部屋を出ようとドアを開けると辰次郎さんの部屋の前で辰次郎さんと男の人がなにか言い争っているようだった。

朝からなんの騒ぎ?


「………帰れって…」と辰次郎さんはその男の人を押し帰しているようだった。


「頼むから帰って来てくれよ!」とその男の人は懇願している。


「あの…」と私が声を掛けると辰次郎さんとその男の人は私に気が付いたようだった。


「あぁもう朝からやねぇ〜しつこいんだから!私の事なんか忘れてって言ってるでしょ!?もぅ帰りなさいよあんたも仕事あるんでしょ?」と辰次郎さんが言うと


「……また来るから」と男の人は帰って行った。


歳は私と同じくらいだろうか?何処かで見た事があるような?……


「辰次郎さっきの人…」


「ひつこい男ってヤーねぇ〜?」と辰次郎さんは苦笑する。


確かあの男の人『帰って来てくれ』って言ってた。

もしかしてあの人辰次郎さんの……

やっぱり辰次郎さんは男の人が好きだったんだ……

私が俯いていると辰次郎さんが声をかける。


「美貴野?こないだの夜の事だけど…」


「辰次郎ごめん…また、迷惑かけちゃったね…私酔っぱらって襲っちゃうなんて酷い女だよね?アハハ……反省してる。二度と襲ったりしないから忘れてごめんね!じゃ、時間だから仕事行くわ」


「あっいや…美貴野……」


辰次郎さんが何かを言おうとしたが私は足早にその場を離れエレベーターを待たずに階段を駆け下りた。

駅までの道も駆けるように急ぎ電車に飛び乗った。