ツケマお化けに恋して

私の手に持っている紙袋には今日発売になった雑誌【La lune】と基礎化粧品が入っていた。


「そう言えば辰次郎さんのお店行った事なかったな…」


昨日のお礼を兼ねてお店を覗いてみる事にした。

ビルの横にある狭い階段を2階に上がり【夜の花園】の扉を開けると「いらっしゃいませ~」とトーンの高い声が掛かる。


「まー初めてのお客さんよね?ママー新規のお客様よ!どうぞこちらに座ってぇ」


私を出迎えてくれたのはピンクのワンピースを着た人でまるで昔のアイドルのような…でも、とてもニューハーフとは思えない程の可愛らしい人だった。

彼女?は私の背中に手を添えてソファーまで案内してくれる。


「私、クリリンリンで〜す。お名刺頂けますぅ〜?」と彼女は自分の名刺を出してくれた。


「あ、どうも…はい…」


私は鞄から名刺入れを出し、一枚クリリンリンさんに渡す。


「あら!出版社にお勤めなの?ヤっだぁ〜編集長じゃない!すごーい!で、編集長さん何飲みますぅ〜?」


「水割りを…」


「はーい水割りね、クリリンリン水割り作りま〜す」


そこへ何処から現れて来たのか辰次郎さん、じゃなくてママのミチルさんが隣りに座った。


「美貴野ちゃんいらっしゃい!」


「あっびっくりした!! 辰次郎…じゃなくてミチルさんどこから出て来たんですか?」


「なに人の事をバケモンが出たような顔で見ないでよ!ヤーねぇ〜」バッシ!と私の背中を活きよい良く叩いた。


「痛っ…」だってその顔は化け物見たいですよ?


「美貴野ちゃん貴女食事は食べて来たの?」


「まだ…」


「馬鹿ね病み上がりなのに食事も取らないでお酒なんか飲んじゃダメよ!今、なにか作ってあげるから待ってなさい!」


「すいません…お世話かけます」


それから暫くすると辰次郎さんは、おにぎりと厚焼き卵を作って持って来てくれた。


「さぁ食べなさいな」


「いただきます」


辰次郎さんの作ってくれた玉子焼きはとても美味しい。

昨日の雑炊といい出汁がきいていてふわふわで本当に美味しかった。


「辰次郎…じゃなくてミチルさん」


「あんたわざと間違えてるでしょ?」と右隣に座っている辰次郎さんは横目でジロッと睨む。


アハハ…バレてる。


「昨日は有り難うございました。これ貰い物で申し訳ないんですけど、良かったら使って下さい」


辰次郎さんに渡した紙袋には仕事関係で貰った基礎化粧品と今日発売された雑誌【La lune】が入っている。


「あら、これ美貴野ちゃんとこの雑誌?」


「今日、第一号が発売されたんです。これみてミチルさんもメイクの勉強して下さい」


いい顔してるんだらかもう少し丁寧にメイクすると絶対キレイなのに…


「まぁこの子ったら自分のほうが綺麗だと思ってるんでしょ?上から目線だわ勘違い女ってヤーねぇ〜」と笑っている。


「酷い」と私は言いながらもこの毒舌結構癖になるかも?…私ってМだったの?……


「ママ、こちら編集長なんですって凄いわよねぇ〜それ私にも見せて」


クリリンリンさんは辰次郎さんから雑誌を奪って行くと他のニューハーフの人と見て騒いでいる。あれだけ綺麗なクリリンリンさんには必要ないかもしれないけど…


「美貴野ちゃん貴女編集長だったの?」


「まぁ…一様この雑誌の編集長でして…」


「じゃお祝いしなきゃ!シャンパンご馳走してあげるポロンちゃんシャンパン持って来て」


「はーい」


直ぐにポロンさんはドンペリを持って来た。

ポロンさんはクリリンリンさんと違ってちょっと残念なニューハーフでお世辞にも綺麗だとは言えない。


「あらやだ!こんなランクの高いドンペリなんて持って来て、これうちの店でも結構高いのよ!」


「ママ、ケチクサイ事言わないで!ヤーねぇ〜、お祝いなんだから良いじゃない」


「まぁ良いわ美貴野ちゃんのお祝いだものね?」


ミチルさんはグラスにシャンパンを注ぐと、私にグラスを手渡してくれた。

そして皆で「乾杯!!」とグラスを上げ口へと運ぶ。


「美味しー」


ポロンさんが話上手で本当に面白くて私は楽しい時間を過ごしていた。

どれだけ飲んだだろうか?

気持ちも良く私も色々話していたようだった。


「ねぇひどいでしょ?……私かわいそぅ…」