政略結婚に隠された真実

大翔の肩に抱えられたまま外に出て、車の横に降ろされた。

「さぁ乗って、愛梨。」
助手席のドアをすっと開けて、愛梨は車に乗るように促された。

私は最後の足掻きだ、と思って、思いっきりイヤな顔をして大翔を見た。
「行かないって言ってるんですけど。」

さっきまで優しい顔で笑っていたのに、今度は、少しムッとした顔で愛梨を見つめた。

「いつまでそう言ってるつもり?自分の意思をはっきり人に伝えるのは良い事だけど・・・、
 あまりにも言いすぎると、相手を怒らせたり、面倒な事になってややこしくなることは知ってる?」

さっきまでの優しい声色とは打って変わって、ヒヤリとさせる様な冷たい声。

あわわっ怒らせた!と思って、愛梨は慌てて俯いた。
俯いた愛梨に、くすっ。ごめんごめん、怖がらせちゃった?っとつぶやきながら、頭を撫でた。

「さぁ、乗って。せっかくいい天気なんだし、どこか行こうよ。」
「・・・分かりました。」

そう言って、少し俯いたまま、目だけ大翔の顔を見た。
大翔はにっこりとほほ笑み、愛梨を助手席に座らせドアを閉め、運転席に乗り込んだ。

日本製のトップクラスの車。”L”のエンブレムが付いてる車。
静かな走行にふかふかなシート、ピカピカに磨かれている車は愛梨は・・・悪いけど、乗り慣れている。

でも、車内はすごくいいにおい。この匂いは芳香剤じゃない。愛梨の好きな匂いだった。
この人もこの匂いが好きなのかな?なんて思うけど、口は開かないと決めていた。

「愛梨、どこか行きたいところある?」
「特にありません。どこでもいいです。」
「・・・そっか、じゃぁ行きたいところが出てきたら教えてね。」
「・・・」
ブッスーっとしたまま、窓から外を眺めていた。



どのくらい走ったのかな?
結構距離走っていると、さっきまでイライラしていた気持ちも、だんだん落ち着いてきた。

落ち着いてきたので、ちらっと横目で大翔をのぞき見てみた。
車まで連れてきた時の強引さは除いて、大翔のこの車のドアを開ける動作を見ると、
この人は、いろいろな事をスマートに行動する人なんだろうか、と考えてしまう。

いや!待って。車乗るときだって脅されたようなもんだわ!
あんなこと言われたら一緒に出掛ける選択肢しか無いじゃない!

・・・でも直感的に、・・・雰囲気から感じるのかな?
動きに無駄がなくスマートで、冷静で決断力があるような感じの人だと思った。