「・・・なんていうと思った?」
「え?」
くすっと笑った声が、真後ろで聞こえた。と思った瞬間、体が浮いた。
愛梨は、大翔の肩に担ぐように抱きかかえられていた。
「ちょッ!!降ろしてッ!!何するのよ!!」
「くくく。何するって、一緒に出かけるから愛梨を連れて行こうとしてるんだけど?」
「だからッ行かないって言ってんじゃん!!バカッ!!」
この男!!楽しんでるし!!
グッと手に力を入れて体を放して、何とか降りようと試みて、
バタバタ暴れてみてもビクともしなくて、全く効果なし。
「くすくす。愛梨、無駄だよ。僕こう見えて結構力があるんだ。」
大翔は意地の悪そうな顔してニヤッとして笑っている。
なんでこんなに笑っていられるワケ?
人の許可なく勝手に担いじゃってッ!!
・・・ぶちッ・・・
「碓氷さん、もう、いい加減降ろしてください!!
嫌がる私を無理やり連れて行って、何が楽しいって言うんですか!!
私あなたと今から出かける予定も、結婚するつもりありませんから!!」
渾身の力を込めて、大翔から降りようと試みたけど、やっぱり無理だった。
それでも、出かけないということの為に足掻いていた。
抱えられ、玄関に向かう途中、愛梨の部屋からコソコソと去っていく父と母の後ろ姿を見つけた。
そんな父と母を見て、大翔はおかしそうに言った。
「お義父さんとお義母さん、ずっと様子を見ていたみたいだね。」
「ッ!!お父さん!!お母さん!!私連れて行かれそうなんだけど!!」
私は大翔の肩の上から必死に叫んだ。
コソコソしてくせに、見つかって開き直ったのか、すごく楽しそうな顔をしながら振り向いた。
「良いじゃない!大翔くんとお出かけ。新くんにも別に行くって言ってないみたいだし。」
「・・・」
一部始終…と言うか、大翔が愛梨の部屋に現れたときから私たちの様子を影から見ていたらしい。
「愛梨、行ってらっしゃい♡」
「大翔くん、愛梨をよろしく頼むよ。」
「はい。ちょっと外出してきます。」
なんだか、ほわんとした和やかムードで会話をしているけど・・・
「ちょっ!私行かないから!!」
「じゃぁ、行こうか。」
ニコニコして大翔は愛梨に声をかけ、また歩き出した。
「碓氷さんとは絶対、行きたくないんだってばー!!」
もう!どうしてウチの親はこんなに能天気なのよッ!!
娘がどうなっても言い訳――――――!?
「降ろしてよ―――!!!」
涙目になって叫ぶ娘を見て、お父さんとお母さんは楽しそうに何やら話している。
「伊織さん、私、大翔くんから愛梨への愛を感じるわ!」
「ははは!それは大袈裟じゃないか?愛と言うか、執念じゃあ・・・。」
「だって、大翔くん、新くんにヤキモチ焼いていたわよ、絶対」
「梨沙、そうやってあまり楽しむんじゃないよ。それは君の悪い癖だ。」
「娘の反応が楽しくって」
「愛梨の事は、大翔くんに任せていたら、問題ないよ。」
「そうね!私たちの長年の夢が叶う訳だし、楽しみにしなきゃね!」
当然、この会話は愛梨には聞こえはいなかった。
