海から離れ道路に出ると街灯が少なく足元が少し暗くなっていた。


冊越しには真っ黒い海が広がっていて終わりが見えず、見ているうちに吸い込まれそうだ。

その海を見ながら俺は静かに名前を呼んだ


「なぁ春」


「なに?」


大好きな声が聞こえ、春の眼鏡越しの瞳を見る


「俺が好きだって言ったらなんて答える?」


遠回しな言い方しかできない自分が嫌になりながらも春の答えを待つ


「初めて話した時よりも好きになったよって言うかな?」


その返事は春らしく、俺はつい頬が緩んでしまった


「…そうかー、変な事聞いて悪い。俺チャラ男に見られてたんだよなー、春に」


「だって金髪でピアスだし、いきなり下の名前で呼んでくるしびっくりしたよ。けど今は優しい人って事がわかったから怖くないしチャラいとは思わないかなー」


怖い。チャラい。その言葉は春に何回も言われてきた。じゃあ、俺が髪を黒にしてピアスをつけなかったら、怖くなくなったら、……泉みたいになったら、春は俺と付き合ってくれるのかな。


ついそんな事を思ってしまった。