「桜の事が好きだから」




タイミングよく花火が上がり、私達の顔を赤色や青色などに染める。


もう少し、もう少し速く花火があがったら、蛍の声がかき消されていたかもしれない。


雰囲気に流されているだけ。

もうその言い訳は通用しない。

皆に優しいなんて通用しない。


何も言わない私の瞳は、まだ蛍の瞳とぶつかっている


「俺が桜と学校に行くのも帰るのも勉強を教えるのも、全部…全部……桜と一緒にいたいから。

今こうしてるのも、桜と一緒にいたいから。」


「…っ!……」


なんでだろう…嬉しいのに……嬉しいはずなのに…ボロボロと涙が零れてきた。

その涙のせいで、綺麗な花火はぼやけてよく見えない。


「…蛍は………優しいよ……」


ギュッと、手を強く握る。


だって、こんな私にそんな言葉を言ってくれるんだもん。


鈍感で、天然で、バカで…


言い出したらキリがない。


そんな私にその言葉は、あまりにももったいなさすぎる。


「…好きだ」


大きな花火があがり、それと同時に蛍と私の唇が触れた。