「もうすぐ、花火あがる時間だな」


「うん」



「桜と、2人で見たい。」


静かな声で、でもちゃんと聞こえる声で言われた


「…うん。」


返事をすると繋がれている手が、少し強く握られた。


なぜ今蛍がこんな事を言うのか、なぜ今もまだ手を繋いでくれているのか、深くは考えない。



これは雰囲気に流されているだけ。



そう思い込む。


草の上に座り、空を見上げる。

夏の空はずっと見ていると吸い込まれそうだ。


「桜」


「なに?」


空を見上げながら返事をする


「俺、桜が思ってる程、優しい奴じゃない。」


そんな事を言われてしまった


「桜と一緒に学校行ってんのも、帰ってんのも、勉強を教えるのも、優しさからじゃない。」


蛍の方に顔を動かすと、蛍はまだずっと空を見つめている。


「今こうしてるのも、優しさからじゃ、ない。」


そう言うと顔を私の方に向け視線が交差する。

その瞳は逸らすことを許そうとはしない。