カタリとコップをテーブルに置くとタイミングよくインターホンが鳴る


「それじゃ行ってきます」


「いってらっしゃーい」


慣れない下駄を履き玄関を出ると蛍とバチッと目が合い、その瞬間愛に言われた言葉を思い出す。


『泉と特別な関係になりたいって思ってるからだよ』


頭にそのセリフが流れ、今からどう話せばいいかわからなくなり、顔に熱が集まる


「桜、浴衣なんだな」


「へっ!?あ、うん…変……かな?」


最初に浴衣の事を言われ声がひっくり返る。


変じゃないかな?色んな意味で変じゃないかな?


「…全然……あの、…似合ってる…」


後ろ髪を触り左下を向きながらそう言ってくれる


「ほっ、ほんと?良かったぁ。蛍に1番に見せたかったんだぁ………あっ」


バッと口を手で塞ぐ


「っ……お前なぁ、んな事してももう聞こえた。ほら行くぞ、電車混むし」


「うんっ」


カラン、コロンと乾いた軽い音が響き、駅に近づくにつれ人が多くなり、浴衣を来た人もチラホラ見え始める。