午後6時20分。やっと浴衣の着付けが終わった。


「その浴衣に髪はシンプルが似合うわね」


髪には紫のお花の髪留めを付けているだけでそれ以外何もしていない。

姿見でくるくる回って自分の姿を確認し、巾着に財布やスマホ等、適当なものを入れる


「蛍君に電話しなさいよ。時間、ちょうどいい頃だしね」


「そうだね、ちょっと電話してくる」


パタパタと廊下に行き、“泉蛍”と表示されているところを押す。


プルルルル…と2コール鳴るとそれが途切れる


“もしもし”


「蛍?用意出来たよー」


“わかった、今からそっち行くわ”


「うん。待ってるね」


プツッと切れ、スマホを巾着に直す


最後に髪や浴衣のしわを直し、忘れていたハンカチを入れる


「12時には帰ってくるんだぞ」


念を押すようにお父さんに言われ、素直に「わかってるよ」と返事をし、テーブルの上のお茶をゴクッと1口飲む