「なんでトウマくんって、いつも斜め前に座るんだと思う?」


放課後。

前から約束していたカフェに来ていた私とミワ。


そこで、今までずっと疑問に思っていたことをミワに打ち明けた。


「あー、あれね。
あたしも分かんないなぁ。
毎回毎回、律儀にルイだけに"前、いい?" って聞くのにね。」


どうしてだろう?

特に、意味はない?


「まぁ、いつも友達と座ってるし…
友達も含めての、前いい?って事なんじゃないの?
でも、トウマくん悔しいぐらいにいつもルイにしか聞かないよね」

「あは。 それなら嬉しい」

「ちょっと! ひどいなぁ」


理由はどうであれ、毎回、ちゃんと聞いてくれるんだ。

優しいな。

そんな優しい所も好きです。



「あっ!そうだっ。ねぇ知ってる!?
トウマくんに、幼なじみがいるって話!
しかも、女の子のっ」

「え、」


突然、身を乗り出して話し出すミワに戸惑いつつ、それ以上の衝撃的な事実にミルクティーの入ったカップを落としそうになった。


…幼なじみ、いたの?

それも女の子の?

仲良いのかな。


その子とーーーー

付き合ってるのかな?


沢山の疑問と不安が頭をグルグルと駆け回る。


「アッチの棟じゃ有名な話らしいよ。
あたしらの棟では全然そんな話ないけどねぇ。 陸上部の子が話してるの、盗み聞きしちゃった!」

「そう、なんだ。」


明らかにテンションが低くなる私に、ハッとした様子でミワは慌てて言った。


「っで、でも! ただの幼なじみらしいよ!? なんか、その子は別に好きな人がいるらしいし……」

「幼なじみの子が、トウマくんを好きじゃなくても…、トウマくんはどうなんだろう。」

「ルイ…。
ごめん、あたし余計な事言ったね」

「ううんっ! いいの。
私は大丈夫だし、それに、どうせ分かるなら早い方がいいでしょ?
ありがとね、ミワ」

「っルイぃぃぃ。 そんな、泣きそうな顔で"大丈夫"なんて言われてもぉ〜」