「トウマくんってさぁ、いつもカレー食べてるよね〜」

「え?そうだっけ?
まぁ、カレーが一番好きだからなー」


今日は金曜日。

今日もいつも通り特等席を確保した。

斜め前のトウマくんは、隣の女の子と話している。

それをコッソリ盗み聞き。


やっぱり、カレーが好きなんだなぁ。

私も、カレー好きです。


斜め前に座るトウマくんを見つめるけれど、彼が気付くはずもなく。

一人溜息をついていると、横から伸びてきた手が私のお弁当の卵焼きを奪った。


「も〜らいっ」

「え、あっ!ちょっとぉ!
最後に残しておいた卵焼き〜っ」

「だってぇ。 美味しいんだもん!
ルイのお母さんのお弁当!」

「…まぁ確かにそうだけど、
って、 さっきから、どこ見て…あ、」


チラチラと前に座っているトウマくんに視線を送るミワに気付いた。


私のために、わざと大きな声で言ってくれてるんだ?

私の存在を、トウマくんに知ってもらうために。


「…ありがと。ミワ」

「えへ。 照れる〜」

「ミワ大好きっ。 トウマくんの次に」


声を潜めて、冗談っぽく言うとミワは声を上げて笑った。