そして、彼が食堂に来てから約半月が経ったある日。
「前、いい?」
何時ものようにお弁当を食べていると、そう声を掛けられた。
不意に顔を上にあげた私は、全ての思考を停止させ、目を見開いた。
「……へ?」
やがて出たのは、そんなマヌケな声。
だって、トウマくんがそこにはいたから。
目の前に立つ彼は何時も遠くから見ていたように、優しい顔で微笑んで、
「いつもこの席座ってるよね。
あったかいの? 俺も座っても、いい?」
夢かと思った。
私、トウマくんに話しかけられてる?
彼は、私を見てるの?
何で急にここに来たの?
沢山の疑問が頭の中を駆け巡り、答えられないでいると、ミワが代わりに
「うん!ぜひぜひっ。どうぞ〜」
そう言ってくれた。
それからというもの……
水曜日と金曜日になると、あの席を狙う女の子が急増。
食堂の一番奥で、一目につきにくかった私の特等席は、一気に皆の特等席に。
だから、水曜日と金曜日になると、私は走る。
…正確には、ミワに走ってもらってる。
だけど。
奥手で、意気地なしな私だから
あの特等席で、キミを見つめることしか出来ないの。
でも、それぐらいは
許してください。

