冬だというのに、今日の天気は良くて。

窓から刺す太陽の光がジリジリと顔を照りつけて、私を焦らしているような気がした。


女子生徒の黄色い歓声や、男子生徒の嬉しそうな声。

それだけで、彼がどれだけ皆の人気者なのかが分かる。


「先に食べるよー。いただきます」



呑気にお弁当を食べ始めるミワを、いつも心底羨ましく思う。



「…あ、わ、私も、食べよう…かな」


不自然ながらも、お弁当に手を伸ばした
そのとき。


沢山の生徒に囲まれながら、

彼はやってきた。


「トウマ、今日はそこに座んのかー?」

「おう。今日天気良いし、ここの席めっちゃ日当たりいいんだよ」


段々と近づいてくる声に、私はお弁当に伸ばした手を停止させたまま、このまま心臓が爆発してしまうんじゃないかと考えていた。


ドキン、 ドキン、 ドキン



近くに、人の気配を感じた。



今日こそ。 そう思って顔を上げると

私の顔を覗き込む、彼と目があった。



「黒沢さん、前座ってもだいじょーぶ?」



少しハスキーな声が、耳を掠めた。

あぁ。 頭がクラクラする。


私は、顔が赤くなるのを感じながら
黙ってコクンと頷いた。