男の子に腕を引っ張られて共に学校をサボるというのは、拉致と言うには大袈裟すぎるかもしれない。


でも。


「はい、ミルクティー。 あったかいよ」

「あ、ありがと…う、ございます」

「ん」


温かいミルクティーを買ってきてくれたトウマくんは、ベンチに座っている私の隣に腰掛けた。


なるほど、トウマくんはコーヒー飲めるんだ。 私は甘いの好きだから、コーヒー飲めないや


コーヒーをすするトウマくんに見惚れて一息つきながら、一時思考停止。



……よくよく考えると。

…これっておかしいよね!?


「ト、トウマくんっ!!」

「んー?」


なんでそんなに落ち着いてるのっ!


「学校は!?」

「サボってるじゃん。」

「なんで!?」

「なんでって、」


トウマくんは一息つくと、隣に座る私をじっと見つめた。


「立花さんと話がしたいから」


真っ直ぐな瞳に見つめられてドキッとする。


あ、私の名字……知ってたんだ?


こんな状況なのに、さっきからそんな些細なことだけで喜ぶ私っておかしい?


ううん。 当たり前だよね。

だって私、セイサちゃんにも名字言ってないもん。


……だから私のこと少しは知っていてくれたんだ、って思ってもいいよね?


「話って……。
あ。 き、昨日は…ごめんなさい。
話の途中だったのに、勝手に泣いたりして、勝手にどっか行っちゃって」

「あぁ、ビックリはしたけど、気にしてないよ。
それよりもさ、その…なんで泣いたかが気になって…、めちゃくちゃ気になって……無理やり連れてきた」


ボソッと恥ずかしそうに呟いたトウマくんに、胸がキュウ、と締め付けられる。


……食堂では見たことない、こんな顔。

いつも、優しく爽やかに笑ってるトウマくん。

照れたりすることも、あるんだ。