「見つけた」



あまりにも一瞬のことだった。


いきなり、誰かに腕を引っ張られ、気付けば私はその誰かと一緒に走り出していた。



「…へ?」



「トウマくんっ!? その女は誰!?」

「先輩っ。 ひどいですぅ〜」



突然のこと過ぎてマヌケな声を出すことしか出来ない私を他所に、後ろでは沢山の女の子たちが泣き叫んでいる。


そして、私の腕を掴んだまま走っているのは、そんな女の子たちにいつものように返事もすることなく、優しいあの笑顔を浮かべるでもなく……無表情。


やっぱり、昨日のことめちゃくちゃ怒ってるんだ!?



私…いま、トウマくんに腕掴まれてる?


こんな状態だというのに、掴まれている私の腕はどんどん熱を帯びていく。



「……ト、トウマ、くん?
え、と。 あの、」

「やっと見つけたと思ったら、あんなコソコソしながら何やってたの」

「う、えと。 あ、の…どこに、行くんですか?」


彼が今向かっているのは、校門。

どこに、行くつもりなの?


「んー? 取り敢えず、どっかゆっくり話ができる場所」

「え、えっ!? 学校、出るって事ですか!?」

「まぁまぁ。」


校門には、沢山の生徒と挨拶をしている先生。


「きゃっ! トウマくんじゃない?」

「ほんどだぁ! てか、隣の子…誰?」


登校中の生徒たちの好奇の目に晒されながら、校門まで行くと、トウマくんは側に立っている先生に声を掛けた。


「センセー! 忘れ物したんで取りに帰ってきます!」

「ん? あぁ、……て、その後ろの子はなんだ!? っおい! 古川!!」


先生の呼びかけも無視して、トウマくんは走り続けた。


ちらっと後ろを振り返ってみたけど、誰も追いかけては来てなかった。



……私、トウマくんに拉致られてる?