「ちょ、ヤダ!ルイ、押さないでよっ」

「押してないよっ。」


週明けの月曜日。


ミワと私は、トウマくん達のいる棟に
潜入していた。



「って、なんでミワ達がこんなコソコソしなきゃなんないのっ!?」

「え? だ、だって緊張するじゃん」

「仮にも、同じ学校なんだし、別に誰がどこにいてもおかしくないって」


ミワはそう言うと、壁に隠れて行き交う生徒を覗いていた私を引っ張って、ズンズン歩いていく。


始まりは、あのカフェでの帰り道。

二人でしんみりしながら帰って、別れ際の時だった。



"今度、そのトウマくんの幼なじみ を見に行こうよっ"

"…え?"

"だって、気になるじゃんっ。
ね? だから行こうよっ"

"うん…。すごく、気になる"

"よし。決定!"


そして、今に至るわけだけど。



「ちょ、ちょっとストップ!」

「もう、なに?」

「心の準備が……スゥーハァー」

「くどい!!」


深呼吸で心を落ち着かせる私をよそに、ミワはトウマくんのクラスであるという三組の中を覗いた。


ミワからの情報で、トウマくんの幼なじみの子の名前を知ることが出来た。


名前は、セイサちゃん。

どんな子かは知らないけど、凄く綺麗な名前だし、綺麗な美人さんなのかな。

そんな想像を自分でしてみる。


……ダメだ。 完璧、負けちゃってる。

あー。 どんな子なんだろう。


まだ準備は出来ていないけど、気になってミワの後ろから、三組の中を覗くと、




「トイレっ! トイレトイレっ!」

「んぎゃっ!?」
「ひゃあっ!?」


同時に、教室の中から"何か"が飛び出して来て、その反動で私とミワは見事にひっくり返った。



「え? あっ! ご、ごごごめんなさいっ。
大丈夫!? あわわ…ど、どうしよう」



尻もちをついてひっくり返った私たちを、通りすがりの人たちはクスクス笑っていく。


頭上で可愛らしい慌てた声が降って来て、顔を上げると、バツの悪そうな顔をした女の子が泣きそうな顔で立っていた。


「あ、ああのっ。すみません!
あたし、よよよく見てなくって…」

「大丈夫よ、気にしないで。」

「ででで、でも…」

「ルイ、立てる? 大丈夫?」


噛みまくる女の子を無視して、今だ尻もちをついている私に手を差し伸べる少し冷たい態度のミワ。


女の子はそんなミワを見て怒らせたと思ったのか、泣きそうな顔で "ごめんなさい" を連呼する。