恋色シンフォニー



ぼうっとベッドに横になっていると、階下からヴァイオリンの音が聞こえてきた。

ほんとに弾くつもりらしい。

何弾いて貰おうかな……。

それにしても。
展開早すぎませんか、三神くん。

別にこうなって後悔してるわけじゃないけど。

うれしいけど、夢みたいなのよね。
流された感満載で、認識が追いついていないというか。



晩御飯は、パエリアに、ニース風サラダ、って、どれだけ準備万端なの。
しかも盛り付けが美しく、味も申し分ないって……。

「え、僕の1日?
5時半に起きて、軽くジョギングしてから、基礎練。
シャワー浴びて朝ごはん食べて、出勤。
帰ってきて、晩御飯作って食べて、家事して、楽器弾いて、お風呂入って、寝る。普通だよ?」

軽く言ってるけど。
朝練とか、ストイック……。

「週末は?」

「家事して、買い物して、楽器弾いて、音楽聴いたり、スコア読んだり」

三神くんのいうスコアというのは、オーケストラの楽譜。全部の楽器がずらーっと並んで一緒に譜面になったやつです。

「あのね、三神くん。最初に言わせていただきますが」

「何?」

「私と付き合っても、練習したかったら、したいって言ってください」

三神くんは、一瞬ぽかんとしてから、苦笑した。
「綾乃、……やっぱり面白い」

「笑い事じゃないよ。だって、時間は限られてるんだよ。
私と付き合うってことは、練習時間が減るってことでしょ。それで下手になったら申し訳ないもの」

「うーーん。やっぱり過保護だなぁ……。わかった。練習したい時は言う。それでいい?」