恋色シンフォニー

「泊まっていくでしょ?」

「泊まる準備とかしてきてないんですけど……。こんなことになるとは、想像だにしておりませんでしたからね……」

澄ました顔で肩をすくめる三神くん。

「男の家にひとりであがったら、少しは想像してよ」
「三神くんを信用してたのよ。酔い潰れた女性をご両親の仏壇の前に寝かせるようなことでは、恋愛には発展しないと思ってたのに」
「僕は寝てる女性を襲うタイプじゃないから。起きてる時に正々堂々口説く」
「正々堂々って……あれが?」
「割とベタで恥ずかしいくらいだけど」
「人を罠にはめておいて、よく言うわよ。ヴァイオリニストの正々堂々って、生演奏だと思ってたけど?」

途端、ピシッと空気が固まった。

ヤバい。
地雷踏んだ。

三神くんが、ベッドに膝をつき、ゆっくり私に顔を近づけてくる。
悪魔の微笑みを浮かべながら。

ヤバいヤバい。

「売られた喧嘩は買うよ。晩御飯食べたら、聴かせてあげる」
「いや別に喧嘩売ったつもりは毛頭ございません!」
「僕のプライドが許さない」

男のプライドほど厄介なものはない。

「リクエスト考えておいて。その代わり……」

何。何なの。怖すぎる。

「今夜は眠らせないから」

三神くんは、にっこり笑って、固まる私の唇にキスを落とした。

何だかとんでもない人を好きになってしまった気がする……。