「綾乃、大丈夫? 起きられる?」
ベッドにぐったり横たわる私の頭を、隣に寝転んだ三神くんが優しくなでてくれる。
「無理……」
「ごめん、ずっと好きだった子とできて、あまりに気持ちよくて、ちょっと抑えがきかなかった」
なっ……。
「三神くんって、恥ずかしいことをさらっと言えちゃうよね……」
最中だって、今だって。
「だって、言葉って、気持ちを伝える優秀なツールでしょ? 音楽じゃ気持ちは伝えられないから、言葉にするのは大切にしてる」
「意外……音楽家でも、そんなこと思うんだ?」
「だって、音楽は表現にすぎないんだよ。どう受け取るのかは、聴いた人の自由。演奏する側が気持ちを乗せることはできるけど、意図した通りに伝わることなんてないと思ってる」
真面目なところは真面目なんだ。
それにしても。
「三神くんがこんなに手が早くてエッチだとは思わなかった……」
「何言ってるの。僕の演奏きいたでしょ?」
確かに、シェヘラザード、色っぽいと思ったわ。
でもここまでとは……。
「綾乃こそ、仕事でのきりっとした感じと全然違った」
そりゃ……仕事モードで抱かれる女がどこにいる?
「大胆で僕はうれしかったけど」
枕で殴ってやった。
三神くんは笑いながら起き上がった。
筋肉がついて、引き締まった身体。
特に、胸から肩、腕へかけてのラインが美しい。
「まあ、お詫びに晩御飯作るからさ、休んでていいよ」
服を着ながら言う。
あれだけ動いたのに、元気だな……。
「余裕ですこと……」
「ヴァイオリニストの体力なめないでよね」
くそぅ。
