恋色シンフォニー

「いや、笑うところじゃないから。ヴァイオリン協奏曲冒頭からソロが出てくる長さに例えると、ベトコンくらいはあっていいんじゃないかと思うんだけど!」

三神くんはニコニコしながら階段を上っていく。

「3分は長すぎじゃない? メンコンくらいがいいなぁ」
「一小節半って短すぎだから! じゃあブラコン」
「2分半も待てない」
「じゃ、チャイコ」
「せめてブルッフ」
「それもはやっ。あのですね、私、シャワーも浴びてないし、着替えも持ってきてないんだけど」
「僕は気にしない」

二階の部屋の一室に入っていく。
柔らかな光が、カーテン越しにもれている。

ベッドにそっと降ろされた。
その仕草が優しくて……不覚にも、きゅんとしてしまう。

「覚悟はできた?」

私の上で、三神くんが嬉しそうに微笑んでいる。

ああ。そんなに嬉しそうなら、まあ、いいか。

私は目を閉じた。

「三神くんの腹黒さには降参」