曲は、カデンツァに入った。
ソリストが1人で華やかに音楽を紡いでいく。
カメラは三神くんを大写しにする。
眉間にしわを寄せ、曲と向かい合う姿。
こんな大舞台、プレッシャーも半端なかっただろう。
緊張もしただろう。
どれだけ練習したんだろうか。
それら全てを乗り越えてのこの演奏。
すごい。すごすぎるよ。
だめだ、もう。
認めざるをえない。
私は、この人に、
どうしようもなく惹かれている。
ヴァイオリニストとして、とか、
同僚として、とか、
男性として、とか、
よくわからないけれど。
憧れなのか、
尊敬なのか、
友情なのか、
恋なのか、
何なのかもわからないけれど。
ーーーこの人が、好きだ。
約20分。重くて大きい第1楽章が終わった。
三神くんは指揮者に向け、少しほっとした笑顔を見せる。
胸が、キュッとなる。
だめだ、こりゃ。
完璧にやられてるわ。
