三神くんの車に乗るのは、飲み会で絡んだ時以来だ。
……って言っても、覚えてないけど。

車の中には、ショパンのエチュードが流れている。

「誰?」

言ってから、言葉が足りなかったかな、と思ったけど、三神くんはすぐに、
「ポリーニ」
と答えてくれた。
通じたんだ、とうれしくなる。

こういうことは、今までのおしゃべりの中でもあって。

「やっぱり! 私も持ってる」
「好きなのがあればどうぞ」
「エオリアンハープ」
「ロマンチックなのが好きなんだ?」
言いながら、曲をかけてくれる。

ああ。この感じ。
打てば響く?
テンポがいい?

「三神くんは?」
「25の5」
「あー私も好き!」

好きなものが一緒であることも多くて。

だから、楽しいんだ。